投扇興のおもてなし
生前、母がよく申しておりました。
「欧米でいわれるフィニッシング・スクールみたいなものが出来たらええなあ」と。
投扇興は、小さなお子様からお年を召した方まで、また海外の方までだれでも参加できる単純な遊びです。
そしてこの遊びを通して、日ごろ精進をしているお稽古(茶道・華道・歌道・香道・書道など)の成果を
楽しく披露できる場でもあります。
かつて母たちは、お友達が遊びにいらっしゃる折に、粋なおもてなしをしていたようです。
床の間の軸を選び、お庭の季節の花を摘んで好みの花器に生けて床の間飾りをし、お友達が見えたら湯を沸かして
お茶をたて、おいしいお菓子をいただきながら話に花を咲かせる。
そのあとに投扇興を興じるのですが、記録をとる書扇人が墨をすることからはじまります。
対戦の始まりは、居住まいを正し、着物を着て、お辞儀をしてからの開始です。
高得点が出れば、少しのお酒で祝杯をあげ、盛り上がってくれば兼題に添って皆で和歌を詠み、
料紙にしたため一人づつ披露する。
そんな楽しい風雅なひと時が日常に流れていたそうです。
もし今もそのような素敵な時間が過ごせたなら、日々の暮らしの中に自然と日本文化が根付いていくのではないでしょうか
投扇興という江戸の遊戯の中に、百人一首や室町時代に興った華道や茶道、礼儀作法を併せて楽しむ集いが、この先、
日本ばかりか海外にまで広められたらと夢はふくらみます。